
「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。その声は、周囲の仲間にも、何も届かない…。これは、人間の世界にも存在する。家庭という密室で。虐待される子ども達、なのだ。
「町田そのこ」の文章は、情景の表現が上手い。雨の景色、風光明媚な海辺、暗い海、遠くに見えたような気がする、クジラの尾ひれ…。登場人物の、救いようのない暗い影との対比。真実が明かされるたび、涙がこみ上げる。「祈る」気持ちで読み進める。怒りがこみ上げる。やはり「祈る」気持ちで読む。
読後感を伝えたいところだが、結末がわかってしまいそうなので、控えることにする。
| 中央公論新社公式サイト | https://www.chuko.co.jp/special/52hertz/ |
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| 本屋大賞サイト | https://www.hontai.or.jp/history/hontai2021.html |
